短編小説ショートショート「自動販売機と縞模様の猫」

真冬の高速道路サービスエリア。

缶コーヒーを買うために車を降り、あまりの寒さに震えながら自動販売機のボタンを押す。

どこからともなく痩せた猫が現れた。捨て猫か、ここで生まれ育った野良猫か。

俺にアイコンタクトをとりながらしきりに鳴く。

「食べるものは何も持ってないんだ」と、言い訳がましく話しかけた。

—そうじゃない—

と、言いたげに瞳をキュッと閉じる猫。

—こっちへ来て—

と、何度も振り返りながら少し奥へと進む。

正直なところ、寒いのでもう車に戻りたいのだが、尻尾の先まで律儀に入った縞模様が気に入った俺は少しついていくことにした。

—こっちだよ—

—こっち—

と、得意げに進んだ先は、4台並んだ自動販売機と壁の隙間。

—ここはね、すごく暖かいんだよ—

と言っているようにしか思えなかった。

俺には狭すぎる特等席で猫に見守られながら缶コーヒーを飲みおえた。

「うちに来るかー?」

と問いかけた。

—にゃあ—

マスカットグリーンの瞳をキュッと閉じた。

妻は猫を見て何と言うだろうか?

猫は好きなはずだが……

まずはエサを食べさせて、風呂だな。

動物病院にも行かなければ。

もう少し肉がつけばきっと縞模様のきれいな猫になるだろう。

「えっ!猫?!」

「男の子?女の子?」

驚いてはいたが歓迎ムードだ。

「しっぽが縞々だね~、蚊みた~い」と風呂場で猫を洗いながら言った妻。

蚊?!

蚊だって?

他の表現があるだろう!